とげなし千両二号
「とげなし千両二号(とげなしせんりょうにごう)」は、
夏秋栽培のナスの代表選手である、
「千両二号」のトゲが出ないように品種改良した品種です。
とげなし千両二号は1994年に育種が開始され、
世に出たのは2007年でした。
もう10年以上栽培されている品種で、
品種登録名は「とげなし湘南1号」といいます。
なお、とげなし千両二号ととげなし千両の違いですが、
とげなし千両二号はやや長めの長卵形の実で節間が長めの品種です。
トンネル栽培や露地栽培に適しています。
一方、とげなし千両は、横太りの長卵形の実をつけ、節間が短めです。
ハウス栽培に適しますが、あまり株丈が伸びてほしくない方にも、
とげなし千両はお勧めの品種です。
では、千両二号ととげなし千両二号の相違点にもふれつつ、
とげなし千両二号をご紹介します。
[とげなし千両二号]タキイ種苗
■とげなし千両二号の特徴
・萼(がく)、茎や葉などの植物体にトゲがない品種です。
・果実の形は「千両二号」と同様に長卵形の品種です。
・トゲがないので、ヘタのトゲによる傷果が少なくなります。
・「千両二号」と同様に果ぞろいがよい品種です。
・「千両二号」と同じく、果実の色は濃い黒紫色です。
・「千両二号」と同様にツヤがあり、色ボケ果の発生は少ない品種です。
・果皮はやわらかく、炒め物、煮物、焼き茄子、漬物等、用途が広い品種です。
・節間は幾分長めの品種です。
・「千両二号」と同様に極早生品種です。
・草勢は「千両二号」よりやや大人しいので、草勢の維持に注意が必要です。
とげなし千両二号、大型プランターで2本仕立て、豊作でした
■とげなし千両二号の栽培のコツ
「千両二号」に準じますが、「千両二号」より草勢が大人しめなので、
早めの肥培管理が栽培のポイントとなります。
●接ぎ木栽培
青枯病に強くスタミナのある草勢の強い台木を選ぶと、
土壌病害回避・良品多収が望めるので、接ぎ木栽培はお勧めです。
●定植苗までの管理
・とげなし千両二号は栽培適応力のある品種です。
・栽培後半まで草勢を維持するには肥沃で保水性の高い、水田跡地が最適です。
・畑地圃場で栽培する場合、できるだけ深耕します。
・深耕すると同時に多く堆肥を圃場に入れ、保水性を高めておきます。
・潅水チューブの設置も草勢の維持が容易になる手段として有効です。
・「千両二号」よりも草勢が大人しめなので、元肥量は「千両二号」より1~2割多めにします。
・1㎡当たりの元肥基準施肥量は、
成分量で窒素(N)25~30g、リン酸(P)30~35g、カリ(K)25~30g程です。
堆肥では1㎡当たり3㎏、苦土石灰(CaCO3+MgCO3)は80~100g鋤き込みます。
・千両二号よりも、幾分早めに定植します。
・初期の株作りと根の活着を促すために、
定植苗は一番花の蕾がふくらみ、紫色に着色する前の苗が最適です。
・活着が遅れたり、定植最適時期を逃した苗を定植する場合、
1番果を切除し、苗の栄養成長を促進させるように管理します。
・長期獲りの場合、畝幅を2m前後で1条植えにします。
・誘引は千両二号と同じようにし、整枝は主枝を3本仕立てにします。
・防風対策も千両二号に倣って行います。
●梅雨明け前までの管理
・1番果の収穫数日前から始めて、草勢を見つつ10~14日おきに施します。
草勢の低下がないかなどチェックしつつ、途中からは追肥間隔を決めます。
草勢の強弱の判断や対応は、千両二号に準じますが、
草勢が千両二号よりおとなしいので、千両二号よりも気持ち早めに対応します。
・追肥は粒状の化成肥料の場合、1回あたり、1㎡当たり成分量で窒素(N)3gとします。
・整枝は太めの枝を4~6本、主枝に選び、誘引します。
秀品収穫と草勢維持を図るため、整枝栽培をお勧めします。
整枝方法は、側枝の一花目の先端に葉を1枚残して摘芯します。
一果目の収穫時に二次側枝を一芽残して切ります。
残した二次側枝が伸びたら、二次側枝の一花目の先端に葉を1枚残して摘芯し、
二次側枝の一果目の収穫時に三次側枝を一芽残して切ります。
この後は同じように摘芯・収穫・切り戻しを続けます。
●梅雨明け後の管理
・梅雨明け後の高温乾燥期に、首細果や色ボケ果の発生傾向が高まります。
この原因は、成り疲れによる草勢低下、過繁茂、水分不足です。
・草勢低下と過繁茂を防ぐには、早めに細い枝や古い葉、傷んだ葉を取り除きます。
・乾燥と地温上昇を防ぐために梅雨明け前より敷きわらをします。
・潅水とタイミングの良い追肥をすることで草勢維持が容易になります。
●適作型
千両二号と基本同じです。目安としてご活用ください。
<半促成栽培>
播種:前年の10月中旬~12月中旬ごろ
ハウスに定植:1月中旬~3月頭ごろ
収穫時期:2月下旬~3月下旬にスタートし、10月中旬ころまで
<トンネル栽培>
播種: 1月初旬ごろ
トンネル内に定植:4月頭ごろ
収穫時期:5月中旬にスタートし、10月中旬ころまで
<露地早熟栽培>
播種: 2月下旬ごろ
トンネル内に定植: 5月初旬ごろ
収穫時期: 6月中旬にスタートし、10月中旬ころまで
<露地抑制栽培>
播種:5月下旬ごろ
定植:7月中旬ごろ
収穫時期:8月下旬スタートし、10月末~11月中旬ころまで
■参考
・ナス 種からの育て方
・ナス 地植えの育て方
・ナス プランターの育て方
・ナス 鉢の育て方
・ナス わき芽かき 摘芯
・ナス 更新剪定