ナス リン酸欠乏
ナスを健全に育てるためには、チッソ・リン酸・カリといった基本の3要素のほかに、
様々な微量要素が必要となります。
どの成分が欠けても、何かしらの不具合が出ます。
中でも、リン酸が足りない状態になると、リン酸欠乏となります。
ナスがリン酸欠乏になると、どのようなことが起こるのでしょうか。
[ナス リン酸欠乏]
■主な症状
・黄化と落葉
リン酸欠乏のおもな症状は、葉の黄化です。
葉の色が徐々に薄くなり、症状が進むと全体的に黄色っぽい薄い色になります。
黄変は下位の葉から発生し、症状が進んだ葉は最終的に落葉します。
症状がかなり進んでたくさん落葉すると、光合成もできなくなり、
株全体の生長も悪くなります。
・生育不良、肥大不良
必要な栄養がそろっている土で栽培しているナスと、
リン酸が足りていない土で栽培しているナスを比べると、
明らかにリン酸欠乏の方が生育が悪くなります。
リン酸が不足している場所に苗を植え付けると、根の生育が促されないため、
初期成育が極端に悪くなります。
葉の幅が狭く、全体的に小さいのが特徴で、枝の伸びも悪いです。
また、なんとか着果しても草勢が弱すぎるため、
肥大も悪く石なすやボケナスになりやすいです。
・芯止まり
リン酸欠乏の症状が進むと、枝の伸びが悪くなるだけでなく、
最終的には芯止まりの症状まで出るようになります。
芯止まりになれば、それ以上の枝の伸びは期待できません。
ナスは枝を伸ばしながら、節に発生する花に着果させて実を収穫します。
そのため、芯止まりを起こすと枝が伸びなくなり、
新しい花を発生させることができず、収量がかなり落ちる結果となります。
■主な原因
・リン酸不足
リン酸欠乏のおもな原因は、リン酸不足によるものです。
土栽培でも溶液栽培でも、リン酸が不足した状態になっていれば、
当然リン酸欠乏の症状が出ます。
土栽培の場合、数年以上野菜栽培を続けている場所であれば、
ほぼリン酸不足にはならないといわれています。
ナス農家などでも、リン酸不足によるリン酸欠乏はほぼ起こらないそうです。
新規で畑を始めた場所などでは、土の中の養分バランスがとれておらず、
リン酸が極端に少ないことが多いです。
この場合に、土作りの段階でリン酸を加えずに栽培を開始すると、
リン酸欠乏となります。
・培養液のバランス
水耕栽培の場合、培養液の成分のバランスが悪いと、
リン酸欠乏が起こることがあります。
水耕栽培に使われる培養液は、
すでにバランス良く配合されたものを使うことが多いです。
もちろん、その培養液をそのまま使うのであれば、
リン酸欠乏が起こる心配はほぼないと考えてよいでしょう。
ところが、リン酸の入った培養液に、濃いカルシウム肥料などを混ぜ込むと、
リン酸とカルシウムが反応してリン酸カルシウムとなり、沈殿します。
沈殿物の中にはリン酸が含まれているものの、
ナスの根が吸収することができないため、リン酸欠乏となります。
■対策
・土作り
土作りの段階で、リン酸を含んだ肥料を加えておくと、
リン酸欠乏が起こりにくくなります。
また、追肥に使う肥料も、極端にチッソが多いものを使わず、
チッソ・リン酸・カリのバランスが良いものを選びます。
特に、栽培を始めたばかりの土地では、
まだ野菜を栽培するのに適した土になっていないことも多いです。
最初から偏った施肥はせず、基本に沿って施肥計画も練りましょう。
また、土がどのような状態か気になる場合は、
土壌診断を受けるのも良いでしょう。
・培養液を入れ替える
水耕栽培で、リン酸欠乏が起こった場合は、培養液を入れ替えて新しくします。
単純にリン酸が足りていないだけであれば、
培養液をリフレッシュすることで不足分が足されるので、症状は改善してくはずです。
また、リン酸を含む培養液には、濃いままのカルシウムを混ぜないように注意します。
■判断基準
葉の黄化は、リン酸欠乏でなくても起こります。
もしリン酸欠乏の心当たりがない場合は、
他の生理障害や病気が原因かもしれません。
色々な可能性を考え、原因を究明しましょう。
■参考
・ナス 種からの育て方
・ナス 地植えの育て方
・ナス プランターの育て方
・ナス 鉢の育て方
・ナス 受粉のコツ
・ナス わき芽かき 摘芯
・ナス 更新剪定
