ナス マグネシウム欠乏症=苦土欠乏症
ナスを栽培していると、マグネシウム欠乏という状態になることがあります
マグネシウム欠乏症という言葉を聞いたことがない方もいるかもしれませんが、
ナスはこのマグネシウム欠乏症になりやすい野菜です。
マグネシウム欠乏症について理解を深め、
症状と対策を覚えておくと対処しやすいです。
[ナス マグネシウム欠乏症=苦土欠乏症]
■マグネシウム欠乏症=苦土欠乏症とは?
マグネシウムは、土の中に含まれる栄養素の1つです。
このマグネシウムが足りなくなった状態が続くと、
ナスに必要なマグネシウムを供給することができなくなり、
ナスがマグネシウム欠乏症になります。
マグネシウムが足りなければ、補えば良いのですが、
マグネシウムが何に含まれているのでしょうか。
もちろん園芸資材として販売されている、
硫酸マグネシウムを施用することでも補うことができますが、
家庭菜園では現実的ではありません。
実は、家庭菜園でもよく使うものの中に、マグネシウムは含まれています。
それは、苦土石灰です。
苦土石灰は、土の酸度が高い時に中和するために使用することが多い資材です。
野菜を育てる前の土作りの段階で、土に混ぜ込む方も多いでしょう。
苦土石灰の苦土とは、マグネシウムのことを指しています。
つまり、マグネシウム欠乏症は、イコール苦土欠乏症ともいえるのです。
シーズン中、元気に育つか心配なナスの苗
■マグネシウム欠乏症の症状
マグネシウム欠乏症になっている時、ナスは葉に症状が出ます。
葉を見てみると、葉脈は緑色をしているのに、
それ以外の色が薄くなっている、黄化していることがあります。
これがマグネシウム欠乏症の症状です。
ナスは、マグネシウム欠乏症だけでなく、
リン酸過剰やカリウム欠乏など、様々な生理障害の症状を葉に出します。
どれも早めに対処することで正常な状態に戻しやすくなるので、
健全な葉とそうでない葉を見分ける力をつけることが大切です。
■マグネシウム欠乏症の原因
マグネシウム欠乏症になる原因は、1つではありません。
原因の特定を間違えると、対処しても改善されず、生育不良になることがあるので、
しっかりと見極められるようになりましょう。
苦土石灰
・酸度調整にカルシウム
マグネシウムは苦土石灰によって補うことができます。
ところが、酸度調整に使う資材が、人によっては苦土石灰でない場合があります。
そもそも酸度調整を行う時に使用する資材には種類があります。
生石灰、消石灰、有機石灰、それと苦土石灰です。
実はマグネシウムが含まれているのは苦土石灰のみで、
他の石灰にはマグネシウムが含まれていません。
有機石灰の場合は、含まれている有機質によっては、
マグネシウムも混ざっていることもあるでしょうが、
生石灰と消石灰にいたっては、カルシウムのみが含まれています。
そのため、酸度調整に苦土石灰以外の石灰を長年使用していると、
土中のマグネシウム量が極端に減ってしまうのです。
・カリ過剰
カリは、肥料に含まれている基本的な要素です。
このカリには、実はマグネシウムの吸収を阻害する働きがあるのです。
そのため、マグネシウムが土に含まれていても、
カリが過剰に施用されてしまうと、マグネシウム欠乏症の症状が出ることあります。
・根傷み
根張りが悪かったり、過湿によって根が傷んだりすると、
根が正常に機能できず水分や養分の吸収力が弱まります。
このような状態では、マグネシウムを吸収することができず、
マグネシウム欠乏症の症状が出ることがあります。
定植後の植え付けやマルチや支柱の設置がナスを元気に育てます
■マグネシウム欠乏症の対策
・酸度調整に使う資材
酸度調整には、生石灰・消石灰・苦土石灰・有機石灰のどれでも使うことが可能です。
けれど、マグネシウム欠乏症を気にするのであれば、
やはり苦土石灰を使うのがお勧めです。
もし苦土石灰以外の石灰を使いたいという場合は、
マグネシウムなどの微量成分も配合されている肥料を使うようにすると、
欠乏を防げます。
・元肥と追肥に注意
ナスは肥料食いとよくいわれるため、肥料の管理が欠かせません。
また、栽培期間が初夏~秋までと長いため、長く肥料が効くようにと、
緩効性肥料を元肥としてたくさん混ぜてしまうことがあります。
この肥料を一度にたくさん与える方法が、
実はマグネシウム欠乏症を助長しているのです。
肥料には、窒素・リン酸・カリが含まれていますが、
緩効性の場合であっても、カリは溶けだしやすいため、効果が急激に出ます。
マグネシウムとカリは拮抗関係にあるため、カリが過剰になってしまうと、
マグネシウムの吸収が阻害され、ナスはマグネシウム欠乏となってしまいます。
ナスのように栽培期間が長く、かつ肥料食いといわれるような野菜を育てる時は、
一度に大量の肥料を与えるのは、良い方法ではありません。
肥料切れさせず、かつ肥料が効きすぎるのを防ぐためには、
常に肥効が安定して出ている状態が理想的です。
・水はけを良くする
ナスは水を好む野菜ですが、過湿の状態が続くと、根が傷んでしまいます。
そのため、栽培する場所の土は、水はけの良い状態に整える必要があります。
どうしても水はけを改善が難しい場合は、
畝を高くしたり、畑の周りに排水のためのしくみを作っておきましょう。
特に定植後の梅雨時期は、長雨が降って過湿になりやすくなります。
この時期に根を傷めると、マグネシウム欠乏症が出やすくなるので、
過湿には注意しましょう。
また「エポック」などの特肥を使うことにより、
土質の改善と、根張りを良くする効果が期待できるため、
土質を向上させておくのも1つの方法です。
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・マグネシウムを過剰に施用しない
マグネシウムとカリは拮抗関係にあるため、カリを過剰に与えるのは禁物です。
けれど、それと同時にマグネシウムを過剰に与えるのも良くありません。
肥料成分の中でも、カリは根を育てるための肥料といわれています。
マグネシウムが過剰な状態では、カリの吸収が阻害されてしまい、
うまく根が育ちません。
根張りの悪い状態では、水分や養分をうまく吸収することができないため、
結果としてマグネシウム欠乏症が発症してしまうこともあります。
■参考
・ナス 種からの育て方
・ナス 地植えの育て方
・ナス プランターの育て方
・ナス 鉢の育て方
・ナス 受粉のコツ
・ナス わき芽かき 摘芯
・ナス 更新剪定